一般医からの精神科医への紹介状 と 精神科医から一般医への紹介状に関して


2008年4月から精神科以外の医師が、精神科医に紹介し、受診予約をとると、 診療報酬として200点(2000円)の加算となりました。

これは昨今わが国で問題になっている自殺につながるようなうつ病患者さんを なるべく早く一般医で見つけ出し、 速やかに精神科医につなげるための1施策ではあります。 しかし、現実には多くの精神科外来では新規予約を取ることが困難になっていますし、 この施策には批判的な意見も多いようです。

それでも、現実にうつ病をはじめとしたメンタル疾患が増加していることも確かで、 何らかの解決策が必要と思われます。

G-Pネットでは、この施策を前向きに考えて、精神科医がなるべく要領よく診療できるために、 一般医から精神科医への紹介状を作製することにしました。

作成に当たっては、G-Pネットの精神科医3名、一般医3名が委員となって、討論を重ね、 G-Pネット総会で第1版(Ver.1)を発表しました。

作製のコンセプトは、精神科医が知りたい情報を主に盛り込むことです。
そのため、書き手の一般医には少々煩雑で、時間がかかる可能性がありますが、 診療報酬の加算がありますので ある程度は納得していただけるものと思います。

また、この紹介状は一般医にとって少々煩雑かもしれませんが、 このような情報を患者さんから聞き出すことで一般医のスキルアップに なるのではないかと考えています。

先日の委員会で改訂版、第2版(Ver.2)を作製しましたので、会誌に掲載するとともに、 別紙として会員の皆様へお送りいたしました。
また、この紹介状はこのHP上からワード形式でダウンロードできますので、 ご自身で使い勝手の良い紹介状をおつくりになりたい先生はご自由にお使い下さい。

なお、世話人会でこの紹介状は著作権などを設定しないと決めさせていただきましたので、 どなたでも使用可能です。


紹介状 書式のダウンロード

作製した紹介状に関してはご自由にお使いいただいて結構ですが、 この紹介状をもとにアレンジされる場合は G-Pネットで作成されたことを明示下さい。

一般医から精神科医への診療情報提供書 第2版(Ver.2)
● Wordファイル
 
● PDFファイル
(PDFファイルには下記の解説が入っています)
精神科医から一般医への診療情報提供書(返書)
● Excelファイル
 
● PDFファイル
 

※リンクをクリックすると、それぞれの書式の電子ファイルがダウンロードできます。



紹介状(一般医から精神科医へ)のポイント

特に太字・下線の項目は重要です。

【1】主訴: 現在の状態に関して うつ状態なのか、不安が強いのか、幻覚があるのかなどを知ることで治療方針の参考になります。
【2】既往歴・家族歴: 背景を知る上では非常に大切ですが、患者自身が紹介状を見る場合も考えるとあまり詳細に書かないほうが良い場合もあります。
(どうしても伝えたい情報は電話などで連絡するほうが良い場合もあります。)
【3】受診姿勢: 患者や家族の治療に対する意欲を聞くことは今後の治療方針を説明する上で非常に大切です。
【4】精神科受診歴: 精神疾患の場合は多数の医療機関を受診したり、治療を中断していることが多いですので、 できるだけ過去の受診歴を聞きだしていただくと、精神科医の問診時に参考になります。
【5】飲酒歴: 飲酒に関しての情報は非常に大切ですので、できるだけ聞きだしてください。
特に飲酒量は少なめに申告することが多いですので注意が必要でしょう。 (場合によっては肝機能やγ-GTPなどの値を記載することも必要でしょう。)
【6】実施検査: 精神科でも器質的疾患を除外するために検査をオーダーする場合がありますので、 最近行った検査に関しては記載してください。
【7】今回エピソードの前の生活歴: 家族問題や構成・生育歴・仕事の状況などは現在のエピソードと 深く関連することが多いので大切な情報です。特に転職が多いなどは重要なポイントです。 技術系か事務系かなどの情報も必要でしょう。
【8】今回エピソードに関する生活変化: うつ病は何らかの転帰がきっかけに発症することが多いですので、 気になる生活変化を聞き出すか、またはある期間診察していた中でかかりつけ医として感じたことなどを記載してください。
【9】身体症状: 器質的な疾患に起因すると思われる症状は印などをつけてわかるようにしてください。
【10】確認項目: 単極性か双極性では初期治療が大きく異なりますので、この項目では反復性のうつ病や躁うつ病を 意識した問診をしてください。
【11】他の精神症状: 精神症状に変化が出てきた時期が重要です。
【12】行動変化: 自殺企図自傷行為に関してはできるだけ聞きだしてください。また、飲酒歴とその変化も できるだけ聞き出してください。
【13】現在処方している精神薬: 安定剤(ベンゾチアゼピン系)や睡眠薬も記載ください。
【14】過去処方薬: 特に効果と副作用情報が必要です。
【15】現在処方していている薬剤: 基礎疾患として処方されている薬とそれに関する検査情報をお書きください。
【16】診断書や傷病手当: 今後精神科で引き続き診断書や傷病手当を発行する場合に、前医の記載内容が参考になります。 可能でしたらコピーを添付ください。
【17】当院での説明・紹介理由: 患者さんに説明する場合に必要ですので、ぜひ記載してください。

最後に重要な情報で、紹介状に書ききれない場合は電話などで連絡することも必要かもしれませんので、 よろしくお願いします。 最後に委員会の先生には貴重なお時間を費やしていただき感謝いたします。

紹介状作製委員会 (敬称略)
  精神科医: 稲田 泰之、坂元 秀実、渡辺 洋一郎
   一般医 : 石蔵文信 (文責)、 赤土 正洋、 野崎 京子

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